特集レポートFeature Report

02 02

「子どもの村福岡」設立までのあゆみ

「子どもの村福岡」設立までのあゆみ

NPO法人「子どもの村福岡を設立する会」設立まで

SOSキンダードルフの理念に触れた時、「これこそ、いま日本に必要とされているものだ」と感じました。組織づくりや資金の確保など、先が見えない不安はありましたが、それより、日本の子どもの状況に感じる閉塞感を破るきっかけをつくりたい、という願いが強かったのです。ファミリーシップふくおかの代表である満留昭久、副代表の坂本雅子、事務局長の大谷順子、それに千鳥餞頭総本舗社長の原田光博が加わり、この4名が呼びかけ人となって、子どもの村の設立を呼びかけました。

福岡では、子どもに関する政策提言など大きな影響力を持つ、「行動する小児科医」の方々が数多く活躍しています。現在、「子どもの村福岡」の理事長をつとめる満留昭久(福岡大学名誉教授)は、早い時期から虐待の問題に取り組んで来た小児科医です。副理事長の坂本雅子(元福岡市助役、福岡市こども総合相談センター名誉館長)、顧問の松本壽通氏、監事の福重淳一郎氏も小児科医です。小児科医の方々は、今回の私どもの活動でも心強い存在となりました。

なぜ、NPO法人か?

「本来、行政がやるべきことではないでしょうか。それをなぜ、NPOがやるのですか?」この質問を、どれだけ受けたか分かりません。私たちは、なぜ、NPOとして子どもの村を設立しようとしたのでしょうか?

わが国の場合、児童福祉法に基づいて施設や里親が制度化され、社会的養護の子どもたちを受け入れてきました。しかし、その制度は基本的に半世紀も変わることなく、子どもの変化に充分に対応できない状況があります。今ようやく制度の見直しが行われ、少しずつ変化も起きていますが、深刻化する子どものニーズには追いついていないのが現状で、一刻も早い解決が求められています。

このため、私たちは市民の力で、「新しい社会的養護のしくみ」を創りだすことを目的として、NPO法人となる道を選んだのです。

子どもの村設立をめざす事業と組織・体制

NPOがその目的とするものを実現するためには、まず組織づくりが必要です。その組織を運営し、目的に向けて活動すること、その活動が成功するためには多くの市民に支持されることが大切です。そのためにはNPOの目的や活動を発信していく広報が必要です。

NPOのマネジメントとは、いわゆる「ヒト(組織)・モノ(事業・プログラム)・カネ(資金)・情報」を有機的に組み立て、ミッションの実現に向けて動かしていくことを言います。「子どもの村福岡」では、これをどのように進めてきたでしょうか。

社会的養護を必要とする子どもたちへの援助システムの研究開発と人材養成(子どもサポート部)

2009年度

坂本雅子(小児科)・松崎佳子(臨床心理)・山本裕子(医療ソーシャルワーク)・山田真理子(臨床心理・幼児教育)・田代多惠子(保健師)・溝上由紀子(音楽療法)・山下洋(精神科)

専門家によって構成された子どもサポート部では、社会的養護の子どもたちを支援するためのプログラムの研究を進めてきました。2007年からは人材養成のための講座を開始、子どもたちと「新しい家族」をつくる育親(里親)と、その家族を支えるスタッフの養成を進めました。2008年度には、「子どもの村のシステム・管理」「人材養成」「建築・管理」「地域協働」と課題ごとのチームにわかれて取り組みました。

2009年度は、子どもの村の開村に備え、子どもの村の管理・運営体制の検討、子どもの村で働く人材の養成・確保、センターハウス事業の企画、子どもを迎える準備、今津地域との関係づくりなどを図ってきました。

子どもの村のデザイン・設計・建築(建築部)

2009年度

瀧山勝久(福岡トヨペット社友)・石竹勇一(ミサワホーム九州)・北芝幹怡(千鳥饅頭総本舗)

2008年度までのデザインの段階では、子どもサポート部の建築担当チームと、斎藤昌平、坂口舞などの若い建築家理事が中心となって日本建築家協会九州支部との連携のもとでワークショップを行い、基本設計につなぎました。

建築工事の段階ではメンバーの入れ替わりもありましたが、体制を強化して、設計者や施工業者の工程会議に加わるなど、竣工まで、施主(子どもの村福岡)としての重要な役割を果たしました。

NPOとしては稀に見る、挑戦的な大事業でしたが、見事に成し遂げたチームでした。

子どもの社会的養護に関する情報提供・啓発(広報部)

2009年度

三宅玲子(チャイルドラインもしもしキモチ)・大谷順子・橋本愛美(事務局)・佐藤衛(スペシャルアドバイザー)

ニュースレターの定期的な発行、ホームページの制作・管理、リーフレットなどの制作、街頭宣伝にいたるまで、子どもの社会的養護に関する理解と共感を広げ、各方面への参加と支援を呼びかけました。特に資金部との連携のもと、支援拡大の呼びかけにはなくてはならない役割を担ってきました。さらにメディアに向けては、積極的に働きかけて、「子どもの村福岡」としての社会的なアピールをしてきました。

社会的支援によるファンドレイジング(資金部のち財務部)

瀧山勝久(福岡トヨペット社友)・北芝幹怡(千鳥饅頭総本舗)・鑓水恭史(全日本広告連盟)・三好隆男(TAM)・高木長道(派呂竹炭)・原田広太郎(千鳥饅頭総本舗)・野村和子(事務局)

子どもの村の建築費の確保、運営資金の安定的な確保は、あらゆる活動を土台で支える重要課題でした。行政補助など得られないNPOにとって、自力で資金をつくるファンドレイジングは、新しい道を切り開くにひとしい創意と努力が求められました。

個人、団体、企業に支援会員を広げ、寄付を募るための活動を、日常的に、エネルギッシュに続けなければこの会は支えられないのです。後援会との連携のもと、企業との関係を広げることも大きな役割です。

SOSキンダードルフ国際本部との連携(事務局)

大谷順子(常任理事会・事務局)・溝上由紀子(通訳・翻訳)

国際本部とは2007年に協定(仮)を結び、進捗状況の定期報告をしながら、一方、国際プログラムの導入を図るなど、日本支部としての準備を進めてきました。子どもの村設立後は、改めて正式加盟のための手続きを経て本協定を結び、2012年までに133番目の国として正式メンバーとなる予定です。

「子どもの村福岡」を支える組織づくり

『こころざし」を束ねる

NPOの組織とは、そのミッションに共感し、行動を共にしようとする人の「こころざし」が束ねられたものです。NPOに参加する各人は基本的にボランティアです。それぞれの自由な意思に基づきつつも、強い結束力が求められるのは、企業や行政とも変わりません。

目的に向かってともに歩む組織づくり、それがNPOのリーダー集団に求められる一番の課題です。子どもの村の建設と運営という、大きな社会的責任を担うに相応しい、柔軟で強い組織を築き上げること、これが私たちにとっての目標です。

社会的な‘‘求心力”をもつ

さらに、このNPOに求められるのは、社会における求心力を持つことでした。絶えず社会に向けて発信し、支援を広げ、協力者を広げる、そのためには、各界に繋がるキーパーソンを得ることが必須の課題として意識的に進めてきました。

子どもに関わる各分野の専門家たち、行政や企業に多くの人脈を持ち、経験豊かな人材、子どもの村福岡の強い推進力は、そのような人材を多く得たことによります。

『理念』と『行動指針』を共有する

2009年10月と、開村を目前にした2010年3月の2回、子どもの村の村長、育親をはじめスタッフと理事も一緒に、一泊二日の合宿ワークショップを行いました。日本ファシリテーション協会のメンバーである佐藤衛氏をファシリテーターとして迎え、すばらしい体験をすることが出来ました。

分野も経歴、背景も違うメンバーが一緒に活動するときに、それぞれの思いがバラバラでは何事も成功しません。「子どもの村福岡」が「めざすもの」と「それぞれの生き方」とを重ね、そのめざすもの(理念)を明確な言葉にし、深く共有すること、そのことを通して強い仲間意識で結ばれることを目標にしたワークショップでした。

その結果生まれたのが、本冊子の冒頭に掲載している「私たちの目指すもの」です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

子どもの頃、嬉しいことがあったとき、 共に喜んでくれたひと。
前を向けずひとりで居たとき、
あなたの手を握りただ隣に居てくれたひと。
自信が持てないとき、代わりにあなたのことを信じてくれたひと。

みなさんにとって、どんなひとですか?

「人と人とのつながりが、 子どもの人生を支えていく揺るがない礎となる」
私たちはそう信じています。

私たちの活動は、皆さんからの寄付によって支えられています。
月1,000 円からのマンスリー会員で活動を支える仲間に。
そして子どもと共に生きる仲間となっていただけたら嬉しいです。

 

 

知っていただくことが一番大切です

もっとSOSについて知りたい方は

あなたのご支援が、
家族と暮らせない子どもたちの力になります

いろいろなご支援のしかた

活動を
支援する