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【 メルマガ会員様限定コラム 】子どもの主体性を育む ー 橋本愛美

みなさんこんにちは!
SOS子どもの村JAPAN 広報の渡辺です。

今月のメールマガジン会員の方限定のコラムは、以前、寄付者の方へお送りをしている
「ニュースレター」からコラムをピックアップいたしました。

タイトルにもある「 子どもの主体性を尊重する 」ということは、
頭ではわかっていても、日常のなかに落とし込みながら、実践をしていくということ。
それは、とても難しい場面がたくさんあるかと思います。

2017年に執筆されたこのコラムは、現在も当団体で活躍をしている
相談支援員の橋本が書いたコラムです。また、2017年に執筆されたものに加え、
現在の環境や状況も振り返りながら、このコラムは書かれています。
子どもたちと遊び、そしてコミュニケーションを取りながら
子どもたちの主体性を育む瞬間を垣間見ることができるコラムになっています。

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「この子が一人の人間として関わってもらった初めての体験だったと思います。」

ある5才の男の子のお母さんが、子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」での支援が終わり、
お別れの時に言ってくださった言葉です。

子どもを中心に、子どもの声を聴き、子どもが決め、家族と一緒に子どもの成長を支えていくという、
私たちが一番大事にしていることが「親子に伝わった」と感じた嬉しいエピソードです。

しかし、「子どもを一人の人間として関わる」ということは、
簡単なようで、これほど難しいことはないようです。
世の中のお母さん、お父さんたちは毎日、子どもを世話、しつけ、慌ただしい日常生活。
保育園や学校の集団生活の中では、大人が先回りして子どものことを決めてしまうことも多く、
子どもの気持ちや考えを丁寧に聴くゆとりが大人にないことがほとんどです。

私たち、こども家庭支援センターでは、親と子に別々の担当者がつきます。
親御さんの担当者は、今困っていることと、親の願い、これまでやってきた工夫を聴くことから始めます。
すると、最初は子どもの困ったエピソードや、集中できない、やる気がないなど、
大人からみて、子どもの困った特徴や、問題点、よくないところがたくさん出てきます。
しかし、私たちが親御さんの苦労やこれまでやってこられた工夫をねぎらい、
どんな不安を抱えているのかに耳を傾けていくと、少し気持ちが落ち着いてくるのか、
「でも、こんないいところもあるんです」
「小さい頃はとても可愛い子でした」
「ほんとは優しい子なんです」と、
その子の良いところをぽつりぽつりと話し出されるようになります。
なかには「私も悪いんです」「私の関わり方がよくないんでしょうね」と
自分を振返り始める方もいます。

一方、子どもは、大人のようにはうまく自分の言葉で表現することができません。
そのため、「どんなことで困っているのか。」「どんなことを感じているのか。」
「どうなっていきたいのか。」を遊びを通して表現します。

「自分は守られている、安心できる、何を表現してもいいんだ」と感じられる
空間と相手がいれば、どんな子どもも、のびのびと自分が困っていることを遊びの中で表現しはじめます。

多動で落ち着かず、親から怒られてばかりいたある子は、
「毒キノコ」を「薬」に変えて食べてみたり。
家のお金を何度も持ち出すある子は、自分の中の「嫌な虫」を絵に描いて
ぐちゃぐちゃに丸めてやっつけたり。
いずれも、自分の中の「悪いもの(毒キノコや嫌な虫)」を「良いもの(薬)」に変えたり、
自分の中から追い出そうとする、その子の願いや目には見えづらい、心の中の努力を表現しているようでした。

親から暴力を受けていたある子は、私に何重もの手錠をかけ、
目隠しをして身動きができない状態にしたうえで、
部屋中のおもちゃをひっくり返し、ぶつけてきました。
こちらを身動きできない状態にしないと安心ができず、
その子が体験してきた恐怖を、こちらにも体験させているような、
大人への不信感や怒りを表現しているようでした。

そして、子どもたちは、私たちを安心できる大人、協力してくれる大人と認識し、
自分のありのままの表現を受け入れてくれる大人だと
感じられるようになると、ホワイトボードに描いた怖い怪物を一緒にやっつけるような、
協力して何かを乗り越えていく遊びや、お互いをいたわったりお世話したりケアし合うような遊びがでてきたりします。

言葉では到底表現できないような不安や葛藤、怒り、
そして自らを癒していく力を、子どもたちは本当にユニークで、創造的に遊びの中で表現することができるのです。
そうした遊びを通して、自分が表現したことが受け入れられ、自分の主体性が尊重される体験をすると、
不思議と子どもたちは落ち着き、親が困っていた行動も減っていきます。

「子どもを一人の人間として関わる」ということは、
子どもの主体性を尊重するということです。
そして、親御さんが子どもの主体性を尊重できるようになるためには、
“親自身にも主体性が尊重される体験”が必要です。
子どもも、大人も、安心して表現できる場があり、それぞれの主体性が尊重されて初めて、
家族の力は発揮されていくのではないでしょうか。

福岡市子ども家庭支援センター「SOS子どもの村」 橋本愛美

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