活動の背景

わが国では、親の病気や貧困、育児放棄、虐待などさまざまな事情によって、親のもとで暮らせない子どもたちが増え続けています。また、東日本大震災によって、多くの子どもたちが家族を失いました。
社会的養護※のもとにある子どもは、全国で約46,000人(厚生労働省2013年度末)。2014年度には、47,600名に達する見込みと言われています。(「社会的養護の課題と将来像への取組」厚生労働省2012年9月)さらに、家族と暮らしていても困難な状況に置かれた子どもはこの数倍はいると推定されています。

※社会的養護とは
保護者のない子どもや、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと。

1.子どもにとっていちばん大切なこと。それは「愛ある家庭」で育つことです。

子どもにとって、家庭環境のもとで、愛され、尊重され、幸せに育つことが、その人生の基礎づくりにどれだけ重要な意義があるか、多くの研究や事例が示すところです。
国連は、「子どもの権利条約」において、「家庭で育つことは子どもの権利である」とし、あらゆる子どもにその権利を保障するために、2009年の総会で、「国連子どもの代替養育に関するガイドライン」を採択し、各国に推進することを要請しています。

国連子どもの権利条約前文は、家族と家庭の重要性を以下のように述べています。

“国際連合が、世界人権宣言において、児童は特別な保護及び援助についての権利を享有することができることを宣明したことを想起し、家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員特に児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきである”

国連子どもの代替養育に関するガイドラインより抜粋

“家族は、社会の基本的集団であり、子どもの発達、ウェルビーイングと保護のための本来の環境であるから、まず何よりも、子どもが実の両親の養育、あるいはそれが適切な場合はその他の近親者の養育のもとに留まるか、戻ることができるように力を尽くすべきである。家族が子どもを養育する役割を果たすために、各国は、さまざまな支援を確保しなければならない。”

里親委託ガイドライン 里親委託優先の原則より抜粋

“家族は、社会の基本的集団であり、家族を基本とした家庭は子どもの成長、福祉及び保護にとって自然な環境である。このため、保護者による養育が不十分又は養育を受けることが望めない社会的養護のすべての子どもの代替的養護は、家庭的養護が望ましく、里親委託を優先して検討することを原則とするべきである。特に、乳幼児は安定した家族の関係の中で、愛着関係の基礎を作る時期であり、子どもが安心できる、温かく安定した家庭で養育されることが大切である。

社会的養護が必要な子どもを里親家庭に委託することにより、子どもの成長や発達にとって、
① 特定の大人との愛着関係の下で養育されることにより、自己の存在を受け入れられているという安心感の中で、自己肯定感を育むとともに、人との関係において不可欠な、基本的信頼感を獲得することができる、
② 里親家庭において、適切な家庭生活を体験する中で、家族それぞれのライフサイクルにおけるありようを学び、将来、家庭生活を築く上でのモデルとすることが期待できる、
③ 家庭生活の中で人との適切な関係の取り方を学んだり、身近な地域社会の中で、必要な社会性を養うとともに、豊かな生活経験を通じて生活技術を獲得することができる”


2.日本の現状

2-1.社会的養護の児童の全体数

社会的養護の子どもの数は、この10年間で10%増加しました。政府の出した「子ども・子育てビジョン」では子どもの虐待相談の増加等を想定して、2008年から2014年までにさらに10%以上増えると見込んでいます。

2014年度、社会的養護の児童の全体数(見込み)47,600人

※数字は、乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、里親、ファミリーホーム、自立援助ホームに措置された子どもの数。
※2014年度の見込みは、「子ども・子育てビジョン」の児童養護施設610カ所、里親等委託率16%等の目標値と、現在の施設の平均定員等からの試算。(「社会的養護の課題と将来像への取組」厚生労働省2012年9月)

2-2.施設養護の割合が高い日本

日本全国で約46,000人(厚生労働省2013年度末)いる社会的養護の子どもたち。その大多数(85%)が大型の施設で育っています。

里親14.8%、乳児院8.0%、児童養護施設77.2%(厚生労働省 2013年度末)

2-3.各国との比較

諸外国では、家族と暮らせなくなった社会的養護が必要な子どもたちを、里親などの家庭的な環境で育てるのが主流です。

各国の要保護児童に占める里親等委託児童の割合(%)(2010年前後の状況) イギリス71.7% ドイツ50.4% フランス54.9% イタリア49.5% アメリカ77.0% カナダ(BC州)63.6% オーストラリア93.5% 香港79.8% 韓国43.6% 日本12.0%

※「家庭外ケア児童数及び里親委託率等の国際比較研究」主任研究者 開原久代(平成23年度厚生労働科学研究)

2-4.被虐待児の割合の上昇

社会的養護の子どものうち、虐待を受けている子どもの割合が高くなっています。深く傷ついた子どもたちを家庭のなかで育てていくことには、様々な困難があります。子どもたちの心身のケアも大きな課題です。

被虐待児の割合

(児童養護施設入所児童等調査結果 2009年2月1日)

里親(31.5%)

児童養護施設(53.4%)

乳児院(32.3%)

2-5.すすむ役割の複雑化

社会的養護は、かつては親が無い、親に育てられない子どもへの施策でしたが、現在は、生みの親との交流のある子どもたちが93%(「社会的養護の現況に関する調査」2012年厚生労働省)を占め、虐待を受けて心に傷をもつ子ども、障害のある子ども、DV被害の母子への支援へと役割も変化し、複雑化しています。
社会的養護の役割・機能の変化に、ハード・ソフトの変革が遅れている現状が指摘されています。


3.社会的養護をめぐる状況の変化

今も、国連子どもの権利条約の目指すところと子どもたちの置かれた現実には、大きなギャップが存在しています。この状況を改善しようと、2009年「国連子どもの代替養育に関するガイドライン」が採択されました。

こうした世界の流れの中、2011年7月の厚生労働省「社会的養護の課題と将来像」によって、家庭養護推進へと進む新しい流れが示されました。また、同年3月「家族を基本とした家庭は、子どもの成長、福祉及び保護にとって自然な環境である。」として、社会的養護を必要とする子どもについて「里親委託を優先して検討するべきである」という「里親委託優先の原則」を打ち出しました。

国連の動きに呼応して、我が国でも「家庭的養護推進」の政策が始まり、SOS子どもの村が長い歴史の中で培ってきた様々な実践を、我が国の社会的養護改革の中で実践・普及する意義は、さらに大きくなってきています。

資料

  国連子どもの代替養育に関するガイドライン

  厚生労働省「社会的養護の課題と将来像」

  厚生労働省「里親委託ガイドライン」